FACT

目次

2023.8
税務訴訟と、我が国の歳入、歳出、及び税収について、一般的なデータを紹介する。

<税務訴訟>税務訴訟件数と納税者勝訴の推移

国税庁が公表している訴訟の発生状況です(国税庁公表データより弊社作成)。
若干の上下はありつつも、平成23年の391件から減少傾向にあり、令和3年度には189件となっています。
また、納税者の勝訴率は、稀に10%を超える年がありつつも、平均は7~8%と安定して低勝訴率が続いています。

※国税庁HP、財務省HPより弊社作成

<税務訴訟>税別訴訟件数の推移

税目別の訴訟件数です(国税庁公表データより弊社作成)。
総じて減少傾向にあり、特に所得税と法人税の訴訟件数は、平成23年度と比べると令和3年度には半分以下にまで減じています。これは、平成23年に、税務調査(実地調査)について、事前通知手続や調査終了時における書面による通知手続および理由の説明手続などが法定された結果、税務調査に必要な事務手続が増加したことが関連していると言われています。調査件数が減少したことに伴い、審査請求件数自体が減少していると推測されます。

国税庁HP、財務省HPより弊社作成

※国税庁HP、財務省HPより弊社作成

国税庁HP、財務省HPより弊社作成

※国税庁HP、財務省HPより弊社作成

<税務調査>不正発見割合の高い業種(法人税)

不正発見割合の高い業種の推移です(国税庁公表データより弊社作成)。
バー・クラブと、外国料理は長年1,2位にランクインしていましたが、令和4年12月に公表された令和3年度調査事績では、その他の道路貨物運送、医療保が代わってトップとなっています。
土木工事、一般土木建築工事もしばしば上位に入る業種です。
令和元年度からは美容業界が新たにトップ10に入ってきています。街の広告でも美容関連の広告をよく見ることからも納得できる結果です。
国税庁が、各税務署に対して「重点業種」として指定した業種に、重点的に税務調査が行われます。こうして景気のいい業種にあたりをつけて調査に入ることが一般的です。

※国税庁HP、財務省HPより弊社作成

<国家予算>我が国の一般会計歳入額内訳(令和5年度当初予算)

令和5年度の歳入予算額です。当初予算で約114兆円であり、その約61%(69兆 4,400億円)を、所得税や法人税、消費税などの「租税・印紙収入」でまかない、残り約31%(35兆6,230億円)は「公債金」で補完しています。
「租税・印紙収入」は、所得税、法人税、消費税がそのほとんどを占めており、この3つの税金が、基幹税として我が国の重要財源として位置づけられています。

※国税庁公表のデータより弊社作成

<国家予算>一般会計税収の推移

税収の推移です。(財務省HPより)
税法とは、どのような国家を創っていくか、その意志を反映したものです。歴史を顧みてみると、バブル崩壊後、金融機関の破綻が相継いだ平成の金融危機、米国同時多発テロ事件、リーマン・ブラザーズ破綻に端を発した世界金融危機などにより、我が国の一般会計税収も1990年の60.1兆円をピークとして逓減し、2009年頃まで低迷が続きましたが、その後増加に転じ、2018年に60.4兆円と約30年ぶりに更新しました。現在も増収傾向にあります。
所得税、法人税は1990年と比較して減収となっている一方、消費税だけは大幅に増加傾向にあることが特徴的です。
収入の低い人の負担割合の方が、収入の高い人より増える消費税の逆進性が一般に危惧されています。

(注) 令和3年度以前は決算額、令和4年度は補正後予算額、令和5年度は予算額である。
出典:財務省ウェブサイト(https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/a03.htm)

<法人税>法人税収の推移

法人税収と法人税率(基本税率)の推移です。(内閣府HPより)
戦後、我が国は、シャウプ勧告をきっかけに、近代的税制が導入、整備されてきましたが、戦後復興や高度経済成長による社会の変化に対応すべく、1988年、抜本的税制改正が行われました。
この時に、法人税率(基本税率)は、43.3%から37.5%へ引き下げられました。1999年、国際化の進展に伴い、競争力を高めることを目的に、さらに30%へ引き下げられ、その後も長年に渡って引き下げられ続けています。
基幹税として重要財源であり、令和5年度の歳入予算額では、一般会計税収約70兆円のうち、約2割の14兆円を法人税収が占めています。

1. 法人税収は、平成30年度までは決済額、令和元年度は予算額による。
2. 所得金額(繰越控除前)は、国税庁「会社標本調査」による。なお、平成17年度までは2/1~1/31、平成18年度以降は4/1~3/31に終了した事業年度を対象としている。
出典:財務省ウェブサイト(https://www.cao.go.jp/zei-cho/content/1zen25kai6-4.pdf)

<所得税>個人所得税の税率推移

個人所得税の税率推移です。(財務省HPより)
1988年の抜本的税制改正で、所得税の税率構造の緩和として、それまで15段階税率であったものが5段階に変更されました。また、最高税率も、70%から50%へ引き下げられました。
1999年の税制改正では、当時の小渕内閣が、停滞した経済活動を回復させるべく、所得税の最高税率を50%からさらに37%へ引き下げました。
その後、数回の累進税率構造変更を経て、現行の、5%を最低、45%を最高とする、7段階の累進制に至っています。

<法人税>法人税の申告税額と件数、法人税収の推移

令和3年度法人税申告所得金額の総額は79兆円
申告所得金額の総額は、過去最高を更新しています。(令和4年10月国税庁公表「令和3事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要」より) 法人税収は、ピークであった平成2年(1990年)には届きませんが、近年のインフレの影響も有り増加傾向にあり、令和3年度には13.6兆円と昨年比121%の増収となっています。(財務省HPデータより)
近年の数字によると、申告件数、申告税額、法人税収は概ね比例関係にあります。

国税庁HP、財務省HPより弊社作成

※国税庁HP、財務省HPより弊社作成

<法人税>法人税の調査事績

平成26年以降の法人税収と税務調査事績について、国税庁公表データと財務省公表データを弊社にてまとめたものです。このデータをもとに以下のグラフを作成しています。
引用元
(国税庁 法人税等の申告(課税)事績の概要)
(国税庁 法人等の調査事績の概要)
(財務省 税収に関する資料)

※国税庁HP、財務省HPより弊社作成

<法人税>税務調査件数と不正件数、不正発見割合の推移

令和元年以降、税務調査件数が大幅に減少しています。それに伴い、指摘される不正件数も減少していますが、「不正件数/税務調査件数」で算出される「不正発見割合」は増加傾向にあり、調査官の不正発見への執念が感じられます。

※国税庁HP、財務省HPより弊社作成

<法人税>税務調査件数と追加課税金額推移

税務調査件数と追徴課税額の関係はどうでしょうか。近年はやや減少していますが、平成の末には追徴課税額は1,700億円~2,000億円、税務調査件数も概ね99,000件前後でした。税務調査件数と追徴課税額は比例関係に有り、件数に応じて追徴課税額も増減するのが近年の傾向です。

※国税庁HP、財務省HPより弊社作成

<法人税>申告件数と税務調査件数、調査率推移

法人税の税務調査の発生割合を見てみますと、コロナ禍の令和2年と令和3年以外は概ね3%前後で推移しています。
直近の令和3年度は、「税務調査件数4.1万件/申告件数306万件」より約1.3%でしたが、今後また3%前後に回復してくることが予想されます。
申告件数は一貫して増加し続けています。

※国税庁HP、財務省HPより弊社作成

<法人税>税務調査件数と否認割合推移

上記で、調査件数と不正発見割合について分析しましたが、不正を含む非違全体の件数ではどうでしょうか。こちらも、調査件数が減少しても、否認割合「非違件数/調査件数」は下げない、調査官の否認への強い意志が感じられる数字となっています。

※国税庁HP、財務省HPより弊社作成

<法人税>黒字件数申告と黒字申告割合の推移

税務調査とは関係ありませんが、興味深い数字を紹介しておきます。法人税申告事績において、黒字申告件数と黒字申告をする法人の割合は総じて増加傾向にあることがわかります。さきほど、令和3年度申告所得金額の総額は、過去最高を更新したという統計もあることから、法人の申告所得額、黒字申告件数ともに増加傾向にあります。

※国税庁HP、財務省HPより弊社作成

<法人税>税務調査件数と訴訟件数の推移

税務調査件数と、その結果を不服とする訴訟件数の相関を見てみます。近年、コロナ禍の影響により調査件数は減少傾向にありますが今後回復可能性がある一方、訴訟件数の方は、感染症の影響だけではなく、事務手続きの煩雑化等により長らく逓減傾向にあります。両者に明らかな相関は無いと言えます。

※国税庁HP、財務省HPより弊社作成

<法人税>追徴課税額、法人税収の推移

追徴課税額はコロナ禍で減少したにもかかわらず、法人税収は増加している点は特徴的です。政府のコロナ対策による経済下支え、株価等の金融環境、小売業などコロナが追い風となった企業の存在に加え、もともと欠損法人である企業の赤字が拡大しても法人税額には影響しないこと等が要因として考えられます。

※国税庁HP、財務省HPより弊社作成

FACT 2024.2.21 消費税の課税状況について加筆した。

昭和63年、我が国において消費税が3%の率で導入された。平成9年に5%、平成26年には8%へと増税、令和元年には、10%へと引き上げられた。この長きにわたる変遷の中で、法人税、所得税を尻目に、現在、筆頭基幹税として不動の地位にある。
国税局から公表されている長期時系列データに基づき、まず、消費税が導入された1989年から現在に至るまでの政治・経済史を、消費税の視点から概観する。その後、消費税の合計申告納税額と申告件数の統計値を、消費税の観点のみから考察する。その後、全国の12の国税局別のデータを、名目GDPや鉱工業出荷指数、貿易統計もまじえ検証する。

<消費税>消費税と政治・経済史

■2024年2月22日、日経平均株価は、史上最高値を更新し、39,098円68銭をつけた。歴史的ピークと言われた1989年12月29日の38,915円87 銭を破る記録更新であった。今、平成初頭に時計の針をまきもどし、この35年間の軌跡を消費税の視点から眺めてみる。

【図A】為替相場 円ドル(1973年~)

■1988年12月、時の竹下登内閣によって消費税法が成立、翌1989年4月から3%の税率で施行が開始されてから、暫く納税額は4兆円から7兆円、還付税額は約1兆円で推移した(【図1】)。

■1990年1月以降、株価・地価の大幅な下落から、日本経済は大規模な景気後退期に突入した。このバブル崩壊期である1990年代前半は、消費税還付税額も毎年下落した(【図3】)。日本経済は、失われた20年或いは30年と呼ばれる長期停滞の時代に突入していった。この時の景気後退を、日本銀行は「その長さ、深さ両面において厳しいもの」と表現している。そんな「下り坂」を、日本経済は転がり落ちていった。 期待感が著しく強気化し、それがまた膨らみ、さらなる過熱現象を呼んでいったその様を、白川元日銀総裁は「期待の著しい積極化」と呼んだ。

■やがて、1993年頃から、日本経済に一時的に回復の兆しがみられ、実質GDPが上昇しはじめた(【図B】)。内閣府による月例経済報告には、「これまでの緩やかな回復基調に足踏みがみられる」「明暗を示す指標が混在しており,回復基調に引き続き足踏みがみられる」「 足踏み状態が長引く中で,弱含みで推移している」「緩やかながら回復の動きを続けている」等、「最悪期は脱した」との文言が並んだ。

■しかし、この回復は短命に終わり、その後も景気の後退が続くこととなった(【図B】)。この頃、イラクのクウェート侵攻、東西ドイツの統一、ゴルバチョフ大統領の辞任とソ連邦の消滅、55年体制の崩壊、地下鉄サリンに事件、阪神淡路大震災など、内外共に激動の時代であった。メキシコ通貨危機を受け円高ドル安が進行、1995年4月には79円75銭台を記録した(【図C】)。この記録は、24年後の2011年10月31日、1ドル75円32銭をもって破られることになるのだが、当時は最高値であり、日銀が相当程度に大規模な為替介入を行った程であった。

【図B】実質GDP(兆円)、名目GDP(兆円)、消費税還付率(%)推移

■そんな中、1997年、橋本龍太郎内閣による5%への税率引き上げが行われ、還付税額は1.6兆円まで増加し(【図3】)、還付率も18%に上昇した(【図4】)。5%へ増税した効果があらわれ、消費税申告納税額は、以後、2014年の8%への増税まで10兆円前後で推移する。一方、還付率は、戦後最長の景気拡張期と言われる2002年まで、比較的低めの約15%を推移する。税率が5%へ引き上げられたことで、消費税にとって節目となった1997年は、後に、景気局面の分水嶺と言われ、日本経済にとっても大きなターニングポイントであった。アジア通貨危機が勃発し、アジア向けの輸出が減少、さらに、名門証券会社山一証券の巨額の損失隠しが発覚、倒産した。かつてバブル経済を牽引した大手証券会社の経営破綻は、バブル崩壊後の日本経済悪化が、「来るところまで来た」ことを示す象徴的な出来事であった。日本経済は不況の域を超えて金融危機に突入し、「底割れ」の状況を呈した。「好循環の連鎖は再び各所で断ち切られた」と白書には表現されている。その後、2002 年初め頃からの景気回復まで、日本経済は深い下降局面へ入っていった。

■1999年以降も、消費税申告納税額は9~10兆円、納税申告件数は逓減しながら、還付税額は1.5兆円前後、還付申告件数は9万件台を推移した(【図1】【図3】)。日本経済はと言うと、2000年、緩やかにではあるが回復しかけていた。しかしながら、その景気回復力は非常に弱く、ITバブルの崩壊、2001年9月11日の米同時多発テロで、当時のブッシュ政権が、オサマ・ビンラディンをリーダーとするテロ組織「アルカイダ」に「テロとの戦い」を宣言すると、米国経済は失速、一時的に2.8%まで回復していた日本の実質GDP成長率は、2001年に再び0.4%へ落ち込むこととなり、景気は悪化した(【図B】)。当時の日本経済白書には「短命の回復から再び後退へ」と記された。
景気拡大と後退が、断続的に繰り返されたこの時期について、後に、白川元日銀総裁は、「偽りの夜明け(false dawn)」と表現し、過度の楽観主義に注意喚起している。

■こうした景気の落ち込みを受け、2001年4月、当時の森内閣が総辞職、後継として2001年5月、小泉純一郎内閣が発足した。4月の自民党総裁選で、橋本龍太郎氏、麻生太郎氏、亀井静香氏の、三候補を制して総裁に選ばれての首相就任であった。「構造改革なくして日本経済の再生はない」で有名な小泉構造改革の発足である。2006年に、任期切れにより、第一次安倍晋三内閣にバトンタッチするまでの5年間は、1980年代の米国のレーガン大統領やイギリスのサッチャー首相の政策にならった、小さな政府による新自由主義経済政策であり、経済界の要望に広く応える政策であった。政権前半期には、不良債権処理に代表される経済活性化と景気対策がメインであったが、後半期には、消費税の事業者免税点制度、及び、簡易課税制度適用上限の引き下げ、配偶者特別控除の廃止、酒 税・たばこ税の増税、個人所得税の定率減税廃止等、増税基調に移っていった。

■2002年以降、還付税額の急速な上昇が顕著である(【図3】【図4】)。後述する通り、この時期以降、特に、名古屋国税局の還付率の伸びが著しい(【図15】)。2001年には18%であったが、2005年には29%にいたり、東京国税局を抜き、リーマン・ショックの直前には、約40%の全国でだんとつの還付率を記録した。全体での還付率もうなぎ登りに上昇し、2007年には約28%にまでのぼった。還付税額はと言うと、平成19年度には約3兆円に達した(【図2】)。この景気拡張期には、実質GDPの増加の一方で、名目GDPが大きく変化がないため、消費税の納税額も、1997年に5%に増税がなされてから、10兆円前後を推移し続けた。(これは2014年の8%への増税まで続く。)
このため、納税額から還付税額をさしひいた正味の納税額は、むしろ減少している。2002年の 1月から、2008年のリーマン・ショックまで約6年間のこの長期の経済拡張期は、戦後最長であったと言われ 、回復期間中に踊り場をはさむなど弱い動きもみられたが、輸出が主導し、実質成長率は平均2%台を超える年もあった【図B】。

【図C】為替相場 円ドル(1992年~)

■2008年のリーマンショックを節目に、還付率は約20%まで減少した。2014年の8%への税率引き上げまで、概ね20%前後で推移し、還付税額も約2兆円まで減少した(【図3】【図4】)。実質GDP額、名目GDP額が2012年、2013年ゆっくりとではあるが回復しているにも関わらず、還付税額に大きく変化がない点に注目したい(【図B】【図D】)。これは、後に述べる通り、この時の景気回復が、アベノミクスによる財政支出と個人消費に牽引されたものであり、輸出が依然低迷していたことにも起因しているのではないだろうか。この時期に発覚した米国のサブプライム問題の拡大により、ドル安円高傾向へ向かった。以降、リーマンショックを経て、世界同時株安・金融危機となり、安全資産とされた米ドルや日本円が買われ、円はドルに対しても買われ、超円高の時代へ入った(【図C】)。ドル円相場は、1995年の記録を破り、2011年10月31日、1ドル75円54銭の史上最高値を記録した。このため、輸出が大きく低迷していった。

【図D】実質GDP額(兆円)と消費税還付額(十億円)の推移

■2009年、衆議院選挙は民主党の大勝となり、鳩山由紀夫氏を首相とする民主党、社会民主党、国民新党の3党連立内閣が誕生した。鳩山総理は「4年間は消費税を上げない」と訴えて圧勝したことが、租税の世界から見ても、印象的であった。消費税は政治家にとってナイーブなテーマである。2011年の東日本大震災でも、消費税の申告税額は約9兆円、還付税額は約2兆円で動きがなく推移した。2010年、菅直人首相による「税率については、自民党が参院選公約に盛り込んだ10%を参考にさせていただきたい」発言で、支持率が低下し、7月の参院選挙で民主党は大敗した(【図2】)。

■2012年、自民党が政権を奪回し、3本の矢に象徴されるアベノミクスが始まる。この時、法人税の引き下げが行われると共に、2014年から消費税が8%へ引き上げられた結果、法人税収は対前年微増の11兆円にとどまった(財務省 一般会計税収の推移)のに対し、消費税の申告納税額は前年の9兆円から13兆円まではねあがった(【図1】)。

■安倍首相による大胆な金融緩和、機動的な財政出動、民間投資を喚起する成長戦略は好感され、日経平均は、2012年11月9日の8,757.60円から13年5月22日の高値15,627.26円まで、6,869.66円(78.4%)高を記録した。この株式市場の様相は、アベノミクス相場と呼ばれる。日銀の黒田総裁の量的・質的金融緩和は、マーケットに強力なインパクトを与え、市場は急速な株高・円安が進行。その衝撃の大きさから「黒田バズーカ」と称されたことは記憶に新しい。歴史的な円高が進んでいた外為市場は、ここで円安トレンドに転じた。2015年の経済白書には「デフレ状況ではなくなる中、経済の好循環が回り始め、景気は緩やかな回復基調が続いている。」と記された。

■2014年、消費税率が8%へ引き上げられたことで、消費税納税額は13兆円、還付額は3.6兆円と、その規模を大きくした。2019年の10%への税率引き上げで、さらに上昇率を強め、その後逓増しながら、現在、円安の影響で、申告納税額は20兆円、還付税額は6兆円に達している。かつてのバブル崩壊期には15%程度であった還付率は、2001年には30%に至っている(【図1】)。後述する通り、東京、名古屋、大阪、関東信越、広島の還付税額の増加が顕著である(【図13】【図14】)。このように、35年間で、納税額は4兆円から20兆円へ、還付税額は、1兆円から6兆円へ増加するに至った。

■輸出消費税還付の観点から、為替相場についてもう少し補足する。為替相場は、2016年に英国のEU離脱決定により、99円台にまで円高にふれたものの、米国大統領選で再び円安へ、2019年の米中貿易摩擦激化懸念では円高へ等、もみ合いながら、コロナショックで一時102円まで円高が進行した(【図C】)。2021年米10年債利回り上昇に連れ、ドル高円安が進み、2022年には、1990年8月以来32年ぶりの150円台の大台にのった。2024年2月現在150円台の円安相場にある。ここで、輸出の数量変化について注目してみる。上で述べた、2002年の 1月から、2008年のリーマン・ショックまで、約6年間のこの長期の経済拡張期には、輸出が好調で、ジェトロ(日本貿易振興機構)の「日本の貿易動向・総括表」から、毎年輸出数量が伸びていることがわかる(【図F】)。一方、リーマン・ショック後の2009年以降、中国経済の減退やギリシャ金融危機の影響で、輸出数量は伸び悩み、前年超えを達成するのは2016年頃からである。コロナショック後、再び輸出は伸び悩み、2022年の日本の輸出数量指数は2000年の水準を若干上回る程度にとどまっていることは注目すべきである。これは、経済産業省の鉱工業出荷指数からもうかがえる(【図E】【図G】)。鉱工業指数のうち、我が国の主たる輸出品である輸送機械工業に絞った指数を、消費税還付率と比較したグラフ(【図E】)と、同じく輸送機械工業出荷指数を、為替相場変動と並べたグラフ(【図G】)である。輸出が不振であった2010年以降も、還付率は上昇している為、消費税還付金が、輸出企業にのみ依拠しているわけではないが、後述するとおり、還付率が特定の国税局に集中していることは興味深い。なお、現在の輸出企業の好業績は、多分に急激な円安によるものであり、2002年~2008年の中国経済の成長等によって伸長したものとは質的に異なる(【図E】【図F】【G】)。

■こうして、バブル崩壊直前期、所得税収は26.7兆円、法人税収は19兆円のピークを記録した一方、令和6年度予算額では、所得税収は17.9兆円、法人税収は17兆円にとどまっている(財務省 一般会計推移)。日本の財源が、この35年間で大きくシフトしたことは、既知のところである。以上が、政治史と消費税史の概観である。

【図E】消費税還付率(%)と鉱工業出荷指数(輸送機械工業)(2020100)の推移

【図F】輸出数量指数(2020=100)と前年比(%)推移

【図G】為替相場(円ドル)と輸送機械工業出荷指数(2020100)の推移

【A】~【G】出典:
日本銀行 為替相場推移
経済産業省 鉱工業指数
内閣府 国民経済計算
ジェトロ(貿易振興機構) 日本の貿易動向

<消費税>全体の概観

■次に、国税局から公表されている長期時系列データを用い、消費税の合計申告納税額と申告件数の統計値を、消費税の観点に絞って考察・概観する。

■1988年12月、時の竹下登内閣によって消費税法が成立、翌1989年4月から3%の税率で施行が開始されて以来、消費税は税率の引き上げと経済・社会情勢を反映させながら、申告納税額、申告還付額、件数ともに、増加と減少を繰り返しながら、現在、導入時に比して、5倍以上にまで増加している。かつて基幹税であった所得税や法人税は、平成初頭の最高記録を未だ更新しないことに対して、その増加ぶりは顕著である。

■1989年に、約4兆円であった申告納税額は、2021年には、約20兆円となっている。導入時から、毎年ゆるやかに上昇しながら、1997年の橋本龍太郎内閣による5%への税率引き上げで、申告納税額は、約10兆円まで急増した。その後、2014年安倍晋三内閣による8%への引き上げで、13兆円にまで跳ね上がり、その後も高い増加率を維持しながら、2020年に税率が10%に引き上げられてから、約20兆円に達している。(【図1】)

■続いて、納税申告件数について見てみる。導入当初、約180万件であった申告件数は、増加しながらも、導入後5年後の1993年頃から減少に転じ、5%への引き上げ時も逓減傾向は変らず、小泉内閣により2004年、免税点が3,000万円から1,000万円に引き下げられる直前には、導入当初に近い200万件まで下がっていた。免税点引き下げ改正により、申告件数は、360万件まで跳ね上がった。現在に至るまで、この申告件数は最高記録となっており、その後、2013年頃まで緩やかに減少したあと、現在に至るまで、納税申告件数は概ね横ばいとなっている(【図1】。法人、個人事業主とも(【図7】【図8】)。

■申告納税額が増加している一方で、件数の減少は、所得税、法人税が、申告納税額と件数がともに増加していることに比して、消費税に特異な点である。これは、消費税の直接税と間接税を併せ持った曖昧な性格と、消費税法の複雑な法理論が一因であると考える。(【図1】)

【図1】<消費税>申告納税額と申告件数推移

■次に、消費税の還付金額について概観する。

■還付税額は、導入当初は、減少傾向にあり、申告納税額に占める還付税額である還付率も減少していた(【図4】)。橋本内閣による5%への引き上げを機に、1993年頃から2002年頃まで、やや上がり約15%の還付率であったが、2002年頃から急激に上昇しはじめ、2007年には30%近くにまで達した。この時の還付税額は約3兆円にまで達した(【図2】)。後に述べるとおり、この時、名古屋国税局と東京国税局の還付率は約40%であり、全体での還付率引き上げの主要なドライバーとなっている(【図15】)。両国税局は、消費税史を通じて、還付額引き上げの主要役者であるが、昨今とりわけ名古屋国税局はその傾向を強くしている(【図19】)。

■全体での還付率の話に戻ると、その後、リーマン・ショックで約20%程度まで減少したあと、逓増しながら、現在は円安の追い風もあり、約30%にまで達している。

■消費税史全体を通して、申告納税額は増加したにも関わらず、還付税額がそれ以上に増加した結果、正味での納税額が減少する現象が散見される。直近では、2017年、2018年、2021年にも見られる(【図2】)。納税額と還付税額は、法人によるものが大半であるため(【図7】【図8】【図9】)、これは、主に法人が申告納税額を増加させながら、それを上回る税額を還付申告していることとなり、昨今の円安も一因であると思われる。

■申告納税額は、この30年間で約4兆円から約20兆円に増加した一方、還付税額は約1兆円から約6兆円までのぼっている。申告件数も、納税申告件数は約180万件から現在約300万件である一方、還付申告件数は、約15万件から、現在では約30万件と、税額、件数、ともに、納税よりも還付の伸びが高い。不正還付申告が蔓延していることも一要因と考えられ、国税庁は、インボイス制度の導入等、租税回避行為の撲滅に向けて積極的な取り組みを展開している。

【図2】<消費税>申告納税額と、還付税額差し引き後の正味税額推移

 

【図3】<消費税>還付申告件数と還付税額推移

 

【図4】<消費税>申告納税額と、納税額に占める還付税額の割合推移

■法人と個人事業主での相違にも言及しておく。令和3年度の納税申告件数は、法人約200万件、個人事業主約100万件、還付申告件数が法人約20万件、個人事業者10万件で、件数ではおよそ2:1の割合であった。

■納税申告件数が、2013年頃以来概ね横ばいであるように、その内訳も、法人と個人事業主で近年大きく変化はない(【図6】【図7】【図8】)。しかし、還付申告件数は、法人、個人事業主、ともに増加傾向が続き(【図5】【図9】【10】)、2020年、2021年においては、個人事業主の還付申告件数の増加が若干顕著であった(【図10】)。これは、新型コロナウィルスの影響で、消費税の課税事業者選択届出等の提出に係る特例の適用を申請し、一時的に課税事業者になった(通常は、課税事業者になることを選択すると、課税事業者を2年間続けなければならない)個人事業者が増えたことも要因と考える。還付件数に関しては、個人事業者が2019年に比して、2倍にまで増加しているが、今後この件数が維持されるか、新型コロナウィルス以前の水準に回帰するか、観察していたい。

■2014年から2021年にかけて、法人の申告納税額は約6兆円増加した一方(【図8】)、個人事業者は約1,000億円の増加であり(【図7】)、納税額の97%、還付税額の99%が法人によるものであることを考えると(【図6】【図9】)、近年の納税額の増分を上回る還付税額も、大半は法人によるものであると考える。

 

【図5】<消費税>還付申告件数と還付税の推移(法人)

 

【図6】<消費税>申告件数に個人事業主が占める割合と、納税額に個人事業者が占める割合推移

 

【図7】<消費税>申告納税件数と申告納税額推移(個人事業者)

 

【図8】<消費税>申告納税件数と申告納税額推移(法人)

 

【図9】<消費税>申告還付件数に法人が占める割合と、還付税額に法人が占める割合推移

 

【図10】<消費税>還付申告件数と還付税額推移(個人事業者)

【1】~【10】出典:
国税庁長期時系列データ

<消費税>国税局別

■次に、全国の12の国税局別のデータを、再度、政治・経済、名目GDPや鉱工業出荷指数、貿易統計もまじえ分析する。

国税庁は、内部部局として長官官房、課税部、徴収部、調査査察部を持ち、全国に11の国税局及び沖縄国税事務所を設置している。これらの地方支分部局の下には、計524の税務署があり、各国税局がこれを統括している。

■2021年の申告納税額の合計は約20兆円であり、その約半分を東京国税局が占める。次に、大阪国税局が約13%の2.7兆円、名古屋国税局が約10%の1.8兆円を徴税し、次に、関東信越国税局が約8%の1.5兆円を占める。残りの約25%の4兆円を、広島、福岡、仙台、札幌、熊本、金沢、高松、沖縄の8拠点が徴税している。

■2021年の還付税額の合計は、約6兆円であった。東京国税局は、その約60%の3.3兆円を還付しているが、次に多い国税局が大阪ではなく、名古屋国税局であることは有意な特徴である。名古屋国税局は、16%にあたる約1兆円の還付をしており、後で述べるように、還付率にいたっては12拠点の中で最大の51%であった。続いて、大阪国税局は、14%の約8,000億円を還付し、残りの10%にあたる6,000億円を9拠点が還付している構造である。

■申告納税に関しては、下左の円グラフのように、東京、大阪、名古屋をメインにしつつ地方からも徴税がなされているが、還付に関しては、下右円グラフのように、極端に3都市に集中している。

 

【図11】<消費税>国税局別  申告納税額推移(百万円)  

【図12】東京、大阪、名古屋、関東信越国税局以外の申告納税額推移(百万円)

【図13】<消費税>国税局別  還付税額推移(百万円)

 

【図14】<消費税>東京、大阪、名古屋国税局以外の還付税額推移(百万円)

【図15】<消費税>国税局別 還付率(申告納税額に占める還付税額)(%)推移

円グラフ、【11】~【15】出典:
国税庁長期時系列データ

■貿易統計と消費税還付税額について見ていく。
2002年から2008年までは長期の景気拡大期であったことは上で述べたが、これは主に、中国経済に牽引された輸出主導による経済成長であったと言われている。すなわち、海外経済の恩恵を受けてのものであった。この時期、1.5%~2%の実質成長率であったが、消費税の納税額にほとんど変化がないことは、名目GDPがほぼ一定であったためと思われる。
2002年から2008年までの還付率の急激な上昇と、この時期の輸出の伸びは相関する(【図B】【図15】【図F】)。(【図F】はジェトロ(日本貿易振興機構)による貿易数量の統計で、2020年の出荷数を100とし、輸出商品全体に重みをつけて指数化したものである。)一方、2010年以降、2002年~2008年の拡張期に比して、輸出数量が伸び悩んだが、アベノミクスによる大胆な金融緩和、機動的な財政出動、民間投資を喚起する成長戦略の成果として、実質GDPは伸長した。その結果、再び、消費税還付税額が急増し、現在に至る(【図B】【図D】【図F】【H】)。

■全体での還付率は15%から28%へ上昇したが、この点、名古屋国税局は39%(【図18】【図19】)で、東京国税局の37%を上回る還付率であり、以後、名古屋は東京を凌ぐ全国で最も還付率の高い国税局として現在に至る。他には大阪25%、高松21%、広島19%が目立っている。他の国税局は概ね7~10%程度であった(【図16】~【図39】)。

■又、上記の名古屋、東京、大阪、高松、広島は、申告納税額から還付額差し引き後の正味の納税額が対前年比でマイナスになる年が多いことも特徴である(【図17】【図19】【図21】【図25】【図37】)。

■2009年は、戦後日本経済にとって最大の落ち込みと言われる景気の谷である。還付率も、20%前後に落ち込んでいる。輸出が、2009年からの超円高とギリシャ通貨危機によるヨーロッパ経済の混迷により減少し、実質GDPにも寄与していない時期である。この輸出に係る還付消費税は、一般に、輸出企業への補助金と揶揄されるが、両者にどの程度相関があるかは、公的なデータからはまだ明確に出来ていない。しかし、興味深いところである。

■2014年、消費税が8%へ増税されたことで、納税額は13兆円に大幅にアップした(【図1】)。この時、各国税局でも、還付率はリーマンショック前の水準に戻り、名古屋では約40%、東京34%、大阪は27%、広島19%であった(【図17】【図19】【図21】【図25】)。その後、2015年には、2014年の消費税増収前の駆け込み需要の反動もあり、還付率は一時的に減少したが、その後、還付率、還付額ともに増加して現在にいたることは上で述べたとおりである。

■輸出企業の2023年の輸出額は過去最高と報道されているが、輸出数量について見ると、現在は2000年の水準を若干上回る程度にとどまっている。為替が、1ドル100円~110円台であった2002年~2007年と比して、交易条件が変化していることもあるのだけれど、昨今注目されているタックスヘイブンよろしく、日本の製造業の国外移転というグローバリゼーションの影響もあると考えられる。
アベノミクス以来の金融大緩和策で、現在は30年ぶりの円安水準にあり、近年の還付額、還付率の上昇は、この円安の影響を多分に受けた面もある。一方で、不正還付申告も増加しているため、国税庁は近年、取り締まりを強化しており、その一環としてインボイス制度が導入され、現在に至っている。以上、消費税を政治史と経済とともに概観した。

【B】実質GDP(兆円)、名目GDP(兆円)、消費税還付率(%)推移(再掲)

【図D】実質GDP額(兆円)と消費税還付額(十億円)の推移(再掲)

【図F】輸出 数量指数(2020100)と前年比(%)推移(再掲)

【図H】為替相場(円ドル)と実質GDP額(兆円)の推移

出典:
日本銀行 為替相場推移
経済産業省 鉱工業指数
内閣府 国民経済計算
ジェトロ(貿易振興機構) 日本の貿易動向
国税庁長期時系列データ

<消費税>各国税局データ

■東京国税局
【図16】<消費税>納税額と還付額の推移(百万円)

【図17】<消費税>申告納税額から還付額差し引き後の正味額対前年比と、申告納税額に占める還付税額割合推移

■名古屋国税局
【図18】<消費税>納税額と還付額の推移(百万円)

【図19】<消費税>申告納税額から還付額差し引き後の正味額対前年比と、申告納税額に占める還付税額割合推移

■大阪国税局
【図20】<消費税>納税額と還付額の推移(百万円)

【図21】<消費税>申告納税額から還付額差し引き後の正味額対前年比と、申告納税額に占める還付税額割合推移

■関東信越国税局
【図22】<消費税>納税額と還付額の推移(百万円)

【図23】<消費税>申告納税額から還付額差し引き後の正味額対前年比と、申告納税額に占める還付税額割合推移

■広島国税局
【図24】<消費税>納税額と還付額の推移(百万円)

【図25】<消費税>申告納税額から還付額差し引き後の正味額対前年比と、申告納税額に占める還付税額割合推移

■福岡国税局
【図26】<消費税>納税額と還付額の推移(百万円)

【図27】<消費税>申告納税額から還付額差し引き後の正味額対前年比と、申告納税額に占める還付税額割合推移

■仙台国税局
【図28】<消費税>納税額と還付額の推移(百万円)

【図29】<消費税>申告納税額から還付額差し引き後の正味額対前年比と、申告納税額に占める還付税額割合推移

■札幌国税局
【図30】<消費税>納税額と還付額の推移(百万円)

【図31】<消費税>申告納税額から還付額差し引き後の正味額対前年比と、申告納税額に占める還付税額割合推移

■熊本国税局
【図32】<消費税>納税額と還付額の推移(百万円)

【図33】<消費税>申告納税額から還付額差し引き後の正味額対前年比と、申告納税額に占める還付税額割合推移

■金沢国税局
【図34】<消費税>納税額と還付額の推移(百万円)

【図35】<消費税>申告納税額から還付額差し引き後の正味額対前年比と、申告納税額に占める還付税額割合推移

■高松国税局
【図36】<消費税>納税額と還付額の推移(百万円)

図37】<消費税>申告納税額から還付額差し引き後の正味額対前年比と、申告納税額に占める還付税額割合推移

■沖縄国税事務所
【図38】<消費税>納税額と還付額の推移(百万円)

【図39】<消費税>申告納税額から還付額差し引き後の正味額対前年比と、申告納税額に占める還付税額割合推移

【16】~【39】出典:
国税庁長期時系列データ

<消費税>参考資料

根拠となるデータは以下から引用している。
【図A】~【図H】
出典:
日本銀行 為替相場推移
経済産業省 鉱工業指数
内閣府 国民経済計算
ジェトロ(貿易振興機構) 日本の貿易動向

【図1】~【図39】
出典:
国税庁長期時系列データ

以下が根拠となる数字である。

<消費税>編集者コメント

■今、逆進性を有する消費税が一般会計筆頭の地位にあることは、一国家の税制としては憂慮するところである。

■2023年10月に新しくインボイス制度が導入されたため、今回、消費税について探求した。1989年に導入されて以来、税率を段階的に引き上げながら、納税額は4兆円から20兆円に増加、還付税額は1兆円から6兆円に増加しており、昨今は還付率の上昇が目立っている。これについて、政治史とともに、国税局別のデータと、名目GDP、実質GDP、貿易統計を観察した。

■税は所得再分配の機能を持つのではあるが、その程度は時代によってさまざまである。小泉政権のような、再分配を最小限にとどめた、冷淡ではあるが小さな政府で効率化を追及するか、かつての橋本流政治のように、親切だが非効率な政府を目指すか、今はどちらが最適だろうか?

■コロナ危機をきっかけに、経済政策の土台となってきた新自由主義がゆらぎ、日本でも、岸田文雄首相が「新しい資本主義」を謳う。再び「大きな政府」の時代が来たのだろうか?
今後も、税制を中心に、さまざまなデータを分析していくので、ぜひ参考にしていただきたい。(2024.2.24)

租税を論じることは、国のあり方を論じることに他なりません。
今後も随時更新していきますので是非ご覧ください。