Groetzinger事件

目次

世界の判例1件目はアメリカのギャンブルによる損失に関する事件になります。
日本でも度々競馬のはずれ馬券の購入費用が必要経費と見なされるか等争われているギャンブルによる経費についてですが、
本件はギャンブルを職として生活している場合には損益通算は認められるのか、繰戻還付の要求は通るのかを主題として取り上げます。

アメリカの法律

アメリカのギャンブルによる損失の扱い

賭け事による損失は賭け事による利益の範囲内でのみ損益通算が認められている。
IRC第165条(d)に制定

アメリカの純損失の扱い

2年までの繰戻と20年の繰越を認められていた。

現在は2018年の税制改正により繰戻の廃止/繰越の無期限化となった。
合わせて繰越欠損金の使用額は課税所得の80%までと変更されている。
IRC第172条(d)に制定

事件の概要

プロのギャンブラーであるGroetzinger氏が1978年に負った損失をギャンブル利益と通算すると共に、
他の所得や前年分の所得とも合わせ繰戻還付の申告をした。
IRS(内国歳入庁)はIRC第165条(d)により、他の所得との通算や繰戻還付は認められないと更正をした。

事件の争点

ギャンブルの経費がどこまで認められるのか。
全額経費控除が認められたとして損失が発生した場合に他の所得との通算や繰戻還付まで認められるのかが争点となった。

両者の主張

Groetzinger氏の主張

自分はプロのギャンブラーのため、所得を得るために必要な経費はIRC第162条(d)の規定に限定されず、
経費が所得の額を上回っているのであれば他の所得との通算や過年度への繰戻も認められるべきであると主張。

IRSの主張

たとえギャンブルを職業としていた場合でも、ギャンブルの損失による控除が認められるのはIRC62条(a)(1)により調整総所得の上の段階までである。
ギャンブルによる損失が多額だったとしても、調整総所得金額がゼロとなるだけのため他の所得との通算や過年度分の還付は認められない。

連邦最高裁判所の判決

Groetzinger氏の勝訴

連邦最高裁判所は次の事実を元にGroetzinger氏がプロのギャンブラーであると判断した。
1週間60~80時間もの時間をギャンブルの分析などに費やしていた
1年間で48週以上をギャンブルの時間に充てていた
また、次の事実を元に利益目的で行われていたと判断した。
・1年間のうち11か月以上被雇用所得やその他の所得が無かった
・口座の取引内容全てがギャンブルに関するものであった
・ギャンブルの活動について正確に記録が残されていた

以上のことからGroetzinger氏の本業がギャンブルであった事を認め、
ギャンブルの利益から控除できるのはギャンブルで生じた損失だけという制限はあるが、
連邦最高裁判所は他の所得との通算及び過年度所得からの繰り戻し還付を認めるという判決を下した。